見本誌の無い即売会

はじめに

2020年8月16日、神戸国際展示場において艦これ(神戸艦中心)オンリーイベント「神戸かわさき造船これくしょん7」が開催されました。

まずもって開催していただいた主催には心から感謝いたします。

本当にありがとうございました。

 

見本誌の無い即売会

新型コロナウイルス下で開催された本イベントでは、今までとは異なる新たな形で開催されました。サークル側、特にいわゆる同人誌を扱うサークルにとって衝撃だったのが「見本誌の設置は遠慮して欲しい」というものでした。

 

見本誌はいわゆる作品紹介の場。

即売会には「表紙買い」という言葉もありますが、中身を見ずに買ってもらえるサークルは限られていると思います。

でも、見本誌の回し読みが原因でコロナウイルスの感染を拡大させては元も子もありません。

僕たち同人誌サークルは「見本誌の無い即売会」という新しい形態での頒布を迫られました。

 

ピンチをチャンスに

開催が刻一刻と迫る中、悲観し嘆いている暇はありません。

そんな折、松本先生がツイッターで「見本誌禁止のディスプレイの試案」を掲載されました。

 そうだ、いつもの敷布にこだわる必要はないじゃないか。

敷布の部分に見本ページを載せればいい、卓上ポスタースタンドも奨励されているなら、そこにも見本誌ページを貼ればいい、これで一石二鳥。

いや、使い終わった紙はそのまま使い捨て処分することで、ウイルス感染のリスクも減らせる…これはもう一石三鳥だろう、と思いました。

 

初手は設計

でも、闇雲に作っても失敗は目に見えています。

そこで、サークルのスペースを最大限に生かすため、サークルスペースの大きさを調べました。

 

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これは即売会ではほぼ共通の大きさだと思います。

机下が700mm×900mm

机上が1000mm×900mm

図中にも書きましたが、机下の高さは700mm目いっぱい使ってはいけません。消防法の観点から床につかないようにしないといけません。

 

最大限活かすには?

この大きさどう使おうか迷っていたところ、天啓と言いますか、このようなレイアウトがひらめきました。

 

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A4の大きさは210✖297mm

A3の大きさは297✖400mm

つまり、A3を図のように並べると横幅297mm×3=891mm

ほぼ900mmになります。

 

コンビニなどのマルチカラーコピー機はA3まで出力ができます。

家庭用PCで原稿を作成して画像データやPDFファイルにしておけば、コンビニで印刷ができ、あとはそれを貼り合わせればいい…なんてお手軽なのでしょう!

 

見本ページをレイアウトしてみた

いよいよ見本ページを貼り付けたポスターを作ります。

でも、ただ貼り付ければいいという物ではありません。

お品書きも兼ねたものにしなければ…

まずは机上のポスターから作成しました。

 

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これ、一番右だけ分かりやすくするため大きく表示していますが、実際は4つとも同じA4サイズです。

朱書きは距離が離れていても目立ちますので、良い感じの机上ポスターを作ることができました。

この流れで、机下の見本ポスターを作ろうとした矢先、事件は起こりました。

 

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なんて見づらいのでしょう!?

1ページを小さくしたためと作品同士が密になっているため、目がちかちかします。

これはひとえに「既刊だから何となく雰囲気が伝わればいいや」とタカをくくっていた自分の落ち度です。

既刊とは言え、まだ手にしたことの無い人に手に取ってもらわないといけないのに。

机下は机上と違って目がいきにくいから、余計に見やすくしないといけないのに。

猛反省して作り直したのがこちらです。

 

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いかがでしょうか?

実はこれ、ページは繋がっていません。どうせ全ページ載せられないのなら、一番雰囲気の伝わるページとキャッチコピーをつけよう…そう思って作成しました。

適度な余白も加わり、とてもスッキリしたのではないでしょうか?

 

自宅でディスプレイのテストをしてみたのですが、とても良い感じでした。

 一番下のA4の紙は、サークルとペンネームを書いただけです。

さすがに床に近いここには何を書いても読んでもらえない、と思ったので…。

 

そして迎える決戦の日曜日

 

こうして当日を迎え、設置した当サークルのディスプレイがこちらです。

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机上のポスタースタンド、84cmまで伸びるタイプで、目いっぱい伸ばしています。

これは、よく見ていただくと分かるのですが、透明のビニールシートを貼っており、その効果が最大限発揮されるようにこの高さになっています。

 

ところで、神戸かわさきは机上ビニールシートを推奨はしていません。

その理由は

①グッズサークルはグッズを置くことで飛沫防止の効果があるから

②倒壊の危険性があるから

です。

ぼくのサークルは、机上に頒布物の在庫を置くため、飛沫防止の為にビニールシートは欠かせないと判断しました。

そして倒壊防止のため、同人誌を入れたファイルボックスを置き、その重みで倒壊を防ぐようにしています。(机上ポスタースタンドの足の上にかませているのがそのファイルボックスです)

このファイルボックスなかなか使い勝手が良く、注文を頂いた頒布物をここからサッと取り出すことができました。

 

闘いを終えて・・・

さて、色々悪戦苦闘してここまで来たわけですが、結果は・・・

昨年とほぼ同数持ち込み、新刊・既刊共に完売しました。

ただし、今回の神戸かわさきは、漫画・イラスト本がとてもよく頒布されていたと耳にしましたので、そういう層の一般参加の方が多かったのかもしれません。

そこで、頒布数ではなく自サークルで感じたことを述べて行こうと思います。

 

①ポスターは思った以上に見てもらえる

見本誌ポスターは机上、机下問わず、だいたい1/2~2/3くらいの方が見て下さった印象です。机下に貼ったポスターをしゃがんで見てくださるのは、今までにない光景だと思いました。(目の前の視界から急に消えるんですよ!?w)

ぼくのサークルは待機列がほぼできない、並んでも3人ほどなので、後ろの人にせかされることなく見本ポスターをじっくり見ることができたのかもしれません。

また、今までは既刊の見本誌を見て下さる人はほぼいなかったのですが、今回は既刊の見本ポスターを見て下さる方が多かったのが印象的でした。A3という大きさ、そしてキャッチコピーが功を奏したのかもしれません。

②ポスターを見たうえで買ってもらえる

絵描き冥利に尽きる話なのですが、これはもしかしたらポスターが無かったら買ってもらえなかったのかもしれません。

③1回使い切りにコンビニのカラーコピーは丁度いい

カラーコピーは少しお値段がかかりますが、コロナ感染の恐れから使い捨てにできるというのは大きなメリットです。また、搬送にあたって重さがほとんどなく、お手軽に持ち運びできるというのも良かったです。

④じっくり立ち読みさんがゼロに

これはあるあるだと思うのですが、1ページ1ページゆっくりじっくり見て買わずに終わり、という方が即売会では必ず一人はいらっしゃいます。ぼくは「お金を出してもらえるレベルには達していなかったか…」と思うだけなのですが、知り合いのサークルさんはこれが大変なストレスになるらしく、そういう意味では長時間立ち読みさんがいなくなるのはメリットなのかもと思いました。

一般参加者も次々に入れ替わるので、人の流れが良いとさえ感じました。

⑤実際の見本誌を読みたいという人はいませんでした

いてもお断りをする予定だったのですが、「見本誌の無い即売会」ということが思った以上に浸透していたのか、現物の見本誌を要求されることはありませんでした。

QRコードも活用

前述のように、新刊・既刊ともに完売したので、完売した同人誌の通販や委託はないのかとお問い合わせをいただいたこともありました。ポスターにQRコードを載せていたので、すぐにご案内することができました。(数人ほどでしたが・・・)

⑥で、結局どうなのよ?

僕自身はデメリットをほぼ感じませんでした。

正直、このまま「見本誌の無い即売会」が続いても構わない、とさえ思ったほどです。

 

一方で、評論系、小説系など文字が主のサークルは苦労されたところも多いと耳にしました。全てのサークルがいきなり成功、というのは難しいのかもしれません。ですが、いずれは画期的なアイデアや方法が紹介されていくことでしょう。

 

最後に…これから即売会に参加される漫画・イラストサークルさんが「見本誌の無い即売会」に参加されるとき、、このブログが参考になれば幸いです・・・

 

 

火産霊神